事例紹介

長崎打ち水大作戦

2015年8月7日

長崎

はじめたきっかけ

20132003年。ドイツ帰りの東京下町育ちの私が、ふとしたキッカケで長崎のまちに移り住むことになりました。
法律が技術を牽引するドイツと、技術が法律を従える日本との違いが日独環境政策の違いであると思いましたが、技術的なレベルは日本だって十分競争力はある。ではどうして、日本ではドイツみたいに環境活動がおもしろくないんだろうか。その原因の一つに、ドイツでは老人も若者もまちのなかで上手に共存しており、これが特に若者達の環境活動にも影響しているんじゃないか。そんな仮説を持っていた矢先の2004年、大江戸打ち水大作戦事務局の方と銀座で飲む機会があったのです。打ち水は誰もができるしわかりやすい。世代がほどよく共存できると思い、これからの日本の環境活動をおもしろくできるんじゃないかと思ったのです。
もう一つ理由があります。長崎のまちはおとなしくって若者に元気がない。移住当初、長崎での集まりに顔を出す機会をあちこちで得ていた私が気づいたことは、若者達を応援する長崎企業がいないことでした。あ、これなんだなと。オトナが若者を育てていない。育てないから踊らない。踊る場所はあるんだけど、それはオトナが踊る場所だったんです。ドイツみたいに、各世代がほどよく棲み分け、その領分でまちなかで踊れるような、そんな文化がなかったんです。ないなら作っちゃえということで、エッジの効いた大学生3名と長崎打ち水大作戦をはじめました。

やってきたこと

当初の活動は、真冬の長崎ランタンフェスティバル開催前のごみ拾いでした。オレンジのツナギを身にまとい、県外から来るお客さんに少しでも綺麗な長崎を見てもらいたい。そんな思いをステップに、今度は夏にも何かしたいとなりました。そんなとき長崎打ち水大作戦が持ち込まれたのです。発起人大学生3名はいずれも長崎大学環境科学部の学生でした。環境を学ぶ中で、エコには楽しみがないと続くわけないし、エコはそもそも結果であって手段ではない、という点で私と一致した考えをもっていました。そしてこの考え方によって、まちづくりの手段としての長崎打ち水大作戦を、10年に渡って続けられてきたのだと思っています。
だから当初から「うれしい、たのしい」という前提でイベント内容を組み立てることができました。難しい環境の話は一切せず、出会いを大切にして、毎年スタッフを変えながら新しい発想で長崎のまちに、若者達の思いを投げかけてきました。そしてきっかけにもあったように、長崎のオトナが若者を育てるべきだという思いを頑なに持ち続け、企業、行政そして地域にいろいろな協力をお願いしてきたわけです。
特に企業に協力してもらうためと若者の活動記録として、第2回より媒体誌を発行しています。長崎企業のすごい人に会ってみたい、という若者達の思いをのせた「あってみな」という冊子を制作し、現在では図書館など公的な施設でも設置されるまでになりました。

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今年の打ち水

長崎打ち水大作戦は今年で11回目。これまで幾度も、若者達と議論をしながら意見を戦わせ、お互いの思いをぶつけてきました。この夏の経験は少なからず、オトナとして旅立つ前の貴重な時間になるよう、私も必死に若者も必死に取り組んできました。10年一昔といわれるように、今年はこれまでの実績を生かしながらも、もっと新しいことに挑戦していきたいと考えています。
昨年の長崎打ち水大作戦では、地域を盛り上げてくれるご当地アイドル「MilkShake」に出演をお願いし、大きく場を盛り上げてもらいました。長崎の魅力や人について、どんどん発信をしていくことがとても大切であることを実感した今年、長崎から日本文化を発信してみようと思いました。
日本が世界に誇れる文化、それはアニメやコスプレといったコンテンツです。是非この分野のみなさんとセッションをしながら、長崎の魅力そして日本の魅力を世界に発信するための打ち水大作戦をやりたいと思っています。
そしてこれまで以上に地域のみなさんとツナガリを持つために、商店街での打ち水や行政職員による打ち水をお願いしています。10年前にはじめたとおり、こつこつできるところから、急がずに広げていくようにしていきます。

これからについて

u_018環境啓発というよりも「まちづくり」と「ひとそだて」が真ん中にある長崎打ち水大作戦が気づいた大事なことがあります。
一つは打ち水が、普段話す機会のない人々同士を結びなかまを作り出すことです。敷居の高いまちづくりを身近なものにする触媒みたいに、水をまくことでつながりやすさがぐんと増すことでした。
長崎打ち水大作戦では、これを日本だけでなく世界にも広げていきたい。そんな思いをで今年のコンセプトを「エコスの環」としました。これは、エコとコスプレをアレンジした言葉と、長崎打ち水大作戦の基本理念でもある「環」を合わせたものです。スタッフがコスプレをしていたとき見知らぬおばさんに「こんな素敵な趣味をここだけにするなんてもったいない。」そう声をかけられたことと、日本のエコの代名詞である「もったない」をシンクロさせたことで生まれました。
そしてもう一つ、大事なことに今年気づきました。

もったいないというのは、素敵なものや美しいことを大切にして人に伝える気持ちなんじゃないか。

これがまさしく日本人が持つ美しい感性であり文化そのものであって、これを世界に向けて発信していくことが、これからの長崎打ち水大作戦の使命ではないかと思っています。世界遺産登録のある長崎には今後、世界中から人や文化が集まってきます。長崎打ち水大作戦の活動を通して若者だけでなく、企業、行政そして地域のみなさんと一緒に、そのための受け皿を創っていけたらと考えています。

長崎打ち水大作戦事務局
総長 松嶋範行

長崎打ち水大作戦

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